第一回秋のこども文学展
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』は、子どものために書かれたお話でした。
大正の雑誌『赤い鳥』と、
昭和はじめの絵本『キンダーブック』。
百年前の子どもたちがひらいた物語と絵を、
多賀の小さなギャラリーで。
極楽の蓮池のふちから、
お釈迦さまが一本の蜘蛛の糸をおろす。
教科書でも知られるこの場面を芥川龍之介が書いたのは、1918年(大正7年)のことでした。大人の押しつけの教訓や、粗末な読み物ばかりだった時代に、夏目漱石の門下であった作家の鈴木三重吉が「子どもにこそ、大人が本気で作った本物の芸術を」と立ち上げた童話と童謡の雑誌『赤い鳥』。その創刊号のために寄せられた最初の一篇が『蜘蛛の糸』です。
三重吉の情熱には、のちに『杜子春』も書いた芥川をはじめ、『一房の葡萄』の有島武郎、『赤い鳥小鳥』や『かなりや』などの童謡を生んだ北原白秋ら第一線の表現者が応え、洋画家の清水良雄がモダンな木版調の表紙絵を描きました。言葉の質をすこしも落とさず、すべての漢字にふりがなを添えて子どもたちに手渡された、日本の児童文学の原点です。
第一回のピックアップ作家は、芥川龍之介です。
言葉の『赤い鳥』に続いて生まれた、
「目で見る世界」の芸術。
1927年(昭和2年)11月にフレーベル館が創刊した『キンダーブック』は、創刊からおよそ百年、いまも全国の幼稚園や保育園で読み継がれている日本でいちばん古い月刊の保育絵本です。「子どものための絵は、大人の絵の縮小ではなく独立した芸術である」と掲げた童画家の武井武雄や、詩人の西條八十らが顧問として名をつらねました。
自然や身のまわりのものを自分の目で見て知る「観察絵本」として、大判の見開きいっぱいに当時の高い印刷技術による鮮やかな多色刷りで走る汽車や街のくらし、四季の草花を描き、書店ではなく全国の幼稚園へ直接届けられました。
百年前の情熱ごと、
棚から選び、手にとってひらく。
会場に並べるのは、『赤い鳥』(1968年・日本近代文学館刊)と、『キンダーブック』(1978年・フレーベル館刊)の、いずれもおよそ半世紀前に、当時の紙質や色合い、装幀まで忠実に写しとって作られた復刻版です。これまで集めてきた所蔵品の中から、時代の空気を濃く残す冊子を選び、表紙が見えるように並べています。
「子どもにこそ本物を」と願った当時の作り手たちの思いを受け継ぎ、ここではすべての本を自由に手にとってお読みいただけます。当時のかなづかいと活字の風合いを大人がひとりでじっくり味わう時間にも、小上がりに座ってお子さんのそばで声に出して読むひとときにも、どうぞ気軽にお立ち寄りください。
開催概要
- 会期
- 2026年11月16日(月)〜21日(土)
- 時間
- 13:00〜19:00(最終日21日は17:00まで)
- 入場
- 無料・予約不要・出入り自由
- 会場
- Gallery 濔巒
(Śūnyatā 内) - 住所
- 滋賀県犬上郡多賀町多賀1123-1
- 交通
- 近江鉄道 多賀大社前駅から徒歩約10分
- 駐車場
- 施設前に無料駐車場(5台)
- 館内設備
- ベビーカーや靴のままで入館できます。小上がり席とおむつ替えの場所があります
- 併設カフェ
- 営業しています(展示のみのご観覧も自由です)
11月16日(月)13:00 にはじまります
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